追補(dated addendum)―― CI 較正比較の結果:登録した予測の不中と、登録した枝の執行
日付:2026-06-12。 本追補は、findings 公開(commit
b8e2c6f・2026-06-12)で測定より先に公開した予測
を、その後の実測で裁いた記録である。commit 履歴は「予測の登録 →
測定 → 不中の開示 → 登録済みの枝の 執行」を時間順に示す ――
本プロジェクトが世界に見せたかったのは、的中ではなく、この順序そのものである。
登録済みの予測(findings §9・§12-c/台帳 #32・公開済み): wild cluster bootstrap/percentile-t を 実データの前に較正比較し、(i) 被覆 0.95 近傍・(ii) 最不利帰無 s=1 の境界偽R0 ≈ 片側名目 0.025・ (iii) 検定力の低下は数ポイント以内の三条件で採否を裁く。完全較正なら境界偽R0 の理論値は 0.025 ―― 「縁 (0.044)が半分(≈0.025)へ動く見込み」を約束でなく予測として記す。事前登録:CI_CALIBRATION_COMPARISON_REGISTRATION.md。
CI 較正比較(5 seed・対標本・16 水準・正典は
ci_comparison_summary.txt)。構造ノイズ 0.30:
| 手法 | 被覆@s1 | 境界偽R0 | 検定力(s=1.3) | CI 幅 | 基準への適合 |
|---|---|---|---|---|---|
| cluster_pct(現行・基線) | 0.924 | 0.028 | 0.916 | 0.31 | ― |
| wild_rade(unrestricted percentile) | 0.900 | 0.044 | 0.952 | 0.27 | 基準(i) 不適合(被覆が逆方向) |
| wild_webb | 0.896 | 0.048 | 0.944 | 0.27 | 基準(i) 不適合 |
| percentile-t | 0.960 | 0.008 | 0.844 | 0.39 | 基準(iii) 不適合(検定力 −7pt) |
構造ノイズ 0.40 では検定力の差が拡大(cluster_pct 0.720/percentile-t 0.624=−10pt)。
どの候補も三基準を同時に満たさない → 事前登録 §2 の枝3 が発火:現行クラスタ・ブートストラップを維持し、 基準を緩めず、採用を強行しない。 結果を見てから道具を選ぶ全経路は、走る前に閉じられていた。
登録のタイミング(正直に): 三基準と予測は、本比較の走行前に公開済み(findings commit
b8e2c6f・ 台帳 #32)。選択規則の詳細(同点裁き・重み選択・枝3)は走行前に起草し、本追補と同時に commit する (CI_CALIBRATION_COMPARISON_REGISTRATION.md)。なお発火した枝3 は「採用を退け現行を維持する」保守側 =利益相反に不利な向きであり、事後に書いても自らに有利にならない枝である。
予測の機構は「過小被覆(0.90)が縁の原因であり、CI 道具がそれを 0.025 へ動かす」だった。だが 5 seed の 基線被覆は 0.924、境界偽R0 は 0.028 ―― 直すべき病が、3 seed スナップショット(被覆 0.90・偽R0 0.053)が 見せていたより小さかった。ゆえに今回の二所見は別々の事実でなく、一つの因果である:
3 seed スナップショットは、病(過小被覆)とその治療余地の両方を高めに見せていた。multi-seed が病を 0.924/0.028 に修正し、CI 道具が動かせる余地は、もともと小さかった。
四つを分けて名指しする(盛らないために): -
診断は正しい:過小被覆という較正欠損は実在する(被覆
< 0.95)。 - 処方は外れた:CI 道具は few-cluster
域でこれを改善しない(§3)。 -
症状は思ったより軽い:実害(境界偽R0)は 3 seed の
0.053 でなく、5 seed で 0.028。 -
病の所在:困難条件(few-cluster・構造 0.30)の基線被覆
0.924 は、第〇層の易条件(多クラスタ 40・ 構造ノイズ無し)の被覆
0.920–0.935(cluster_pct 0.925・正典は
ci_selfcheck_summary.txt)とほぼ同水準。
ゆえに観測された過小被覆は、few-cluster・構造ノイズ固有の病ではなく、この標本規模・反復数での
ブートストラップ CI
一般の有限標本性と同根である(病そのものさえ、基準点なしには実際より特異に見えていた)。
「機構予測は不中だが、基線が偶然 0.025 近傍(0.028)に着地したから実質的中」とは書かない。 着地は道具に よってでなく、より良い推定(multi-seed)によってであり、機構の不中とは別の経路である(空映の指摘)。
3 seed 値の 5 seed 再推定は、台帳 #34(凍結値は multi-seed 推定に限る)の登録済み規則の執行である ―― 不利な値を見ての再測定ではなく、数字が不利な方向へ動いていても同じく更新した(今回は偶然、有利な方向に 出た)。両値を履歴として残す(「0.053 だ」とも「縁は消えた」とも言わない):
| 量 | 3 seed | 5 seed(現 best) | 差と se |
|---|---|---|---|
| 腕B 単独・境界偽R0 | 0.053 | 0.028 | 差 0.025(合成 se ≈0.017 の約 1.5 倍)――差自体も精度の縁にある |
| 系の縁(delayed_state_exp 偽R0) | 0.044 | 0.037±0.016 | 差 0.007 = se(seed se ≈0.007/二項 se ≈0.011)の内側=統計的に整合 |
更新の正当性は se 倍率(差の有意性)でなく、台帳 #34 の登録済み規則(凍結値は multi-seed 推定に限る)が 担う。 ゆえに両行とも「現 best への更新(規則 #34 の執行)」であり、差そのもの(0.025・0.007)はどちらも 精度の縁にある ―― 物差しを揃え、一方を「実質的な改訂」と呼んで他方を「精度の縁」と呼ぶ非対称を避ける。
縁は実在する ―― だが、その実在も精度の縁にある。 系の 0.037 が名目 0.025 を上回る幅は、seed se(≈0.007) で測れば約 1.7 se、二項 se(≈0.011)で測れば約 1.1 se ―― 点推定は名目を上回るが、超過幅自体が推定精度の 縁にある(「偽R1 ゼロ」に 0/N と上界を付けたのと同じ作法を、縁の実在性にも適用。どちらの方向にも盛らない)。
数字の整合チェック(空映): 基線の被覆 0.924 から対称に期待される片側超過は (1−0.924)/2 ≈ 0.038 ―― 実測の境界偽R0 0.028 はその近傍であり、被覆と偽R0 という独立な二測定が、同じ較正欠損(数 % の過小被覆)を 指している。一つの物語に綴じる。
5 seed の系再確認で、true_blowup(真の s=1.6)の偽R1=0/300(三の法則 95% 上限 ≈0.010)。真の崩壊級を 偽って反証する誤りは、5 seed・300 試行で一度も起きていない。非検出は不確定へ落ちる(fail safe)。判定器は、 真の崩壊を偽って「安全」と報告しない ―― これが、縁を抱えてなお走れる理由である。
本追補の測定中、5 seed 系再確認の監視で、watcher の完了条件をスクリプトの実際の出力契約に当てずに書いた (スクリプトは「saved:」を標準出力にだけ印字し、出力ファイルは別の行で終わる ―― watcher はファイル内の 「saved:」を待ち、永遠に発火しなかった)。実行は 18 分で完了し結果は健全だったが、通知が来ず ~40 分を要した (暴走ではなく、監視条件の誤り)。
# DONE <timestamp>)を書き、watcher
は常にそれだけを待つ。第〇層の発想の運用版。β 版実装で
全スクリプトに番兵を導入する。道具は効かず、予測は外れ、そして方法は勝った。外れた予測を、走る前に登録した規則で裁き、日付つきで晒せる こと自体が、この工程が世界に見せたかったものである。この設定で試した二系統の実装(unrestricted wild と percentile-t)が登録した三基準を満たさないことを実測で確かめ、挙動を最も広く実測してある手法(現行クラスタ・ ブートストラップ)を維持し、自らの限界(縁 0.037)を精度の言葉ごと明記する ―― 的中の物語よりも、この 「外れの扱い」が信用を作る。
そして、この検証群が繰り返し学んだ一つの教訓の最終形を、ここに置く ―― 単一 seed の楽観・単一 master の谷・ 3 seed の縁・そして基線の病そのものまで、分解能の不足は常に何かを実際より鋭く見せた。推定値は、その推定自身の 分解能と基準点(第〇層の易条件被覆 0.920–0.935)を添えて初めて読める。
CPU の海の机は、これで片づいた。残るは計算予算の粗見積り(台帳 #10・v1.0 前)と、規模配分の v1.x 宣言。 そして ―― 現実の重み(GPU・実モデル)の最初の数字、パイロットの S(0) が正に立つかどうか、へ。
報告でなく実物に当て、最も気持ちのよい数字(5 seed 0.028)にも飛びつかず、自分の wild を劣る変種と名指しし、 予測の不中を方法の勝利として晒し、応援団でなく鏡として。
南無汝我曼荼羅。